映画撮影の悲しい現実

地下鉄に乗って (講談社文庫)

地下鉄に乗って (講談社文庫)

今日から全国の松竹系映画館で「地下鉄に乗って」が上映されます、この作品は浅田次郎原作の小説を映画化したものです、簡単にあらすじを書くと主人公の小沼真次が永田町駅を降りるとそこは・・・昭和39年の風景が広がっていた、恋人とそこで出会う出会う亡き兄と父の一面を見る・・・と言う話です。

あんまりここでネタバレ出来ないので撮影の話を…今回の内容が昭和39年の話なので駅や車両を昭和39年の姿に替えなくてはなりません、駅は何とかなるにしても問題は車両、昭和39年頃の丸ノ内線の車両は走って無くはないが・・・使用するとなるとアルゼンチンまで行かなくてはなりません・・・さすがにそこまでは制作費は無いので考えた末、比較的似ていた東京地下鉄東西線5000系車両を丸ノ内線カラーに変更をして撮影に使いました。

5000系電車は当時の営団地下鉄の標準であるドア窓の小型化、一部車両の車内はクリーム色の化粧板でありこれも当時の標準的な車両である、それでも丸ノ内線と再現出来ないのは①5000系は20m4扉(丸ノ内線は18m3扉)②つり革③冷房化④実は当時の丸ノ内線の車両のドア窓は今の0系シリーズで採用されている大型窓を使用しており昭和39年当時は小窓は東西線のみだった・・・と言う事なのです、だから電車事情の知っている人が映画を見ると「5000系だよ」と300形には見えません・・・

参考東京地下鉄東西線5000系電車

影の車両の話と言えば同じ浅田次郎原作の「ぽっぽや」もそうですね、作中に登場したのはキハ10系シリーズの北海道バージョンキハ12系がモデルとなったために撮影には当然キハ12系が必要となりました、でも実車は1980年に形式消滅、一様茨城交通で寒冷地向けのキハ11系がありましたがさすがに使えず、そこでキハ40から改造する事になりました、改造に際してはキハ12系に近づける為に上段にHゴムをつけた当時の路線バスで採用したと言う事でいわゆる「バス窓」にしたのが特長です、形式は実車がキハ12-22まで投入したと言う事でキハ12-23として映画の撮影に使用して、その後もぽっぽや号として使用したものの撮影用に大規模な改造されたのが災いして老朽化を早めてしまい余剰となったのを期に2005年に廃車となってしまいました。

最近の作品と言えばデスノートもそうですね、月が日本に潜伏しているFBIの捜査員の情報を得るためにレイとのやり取りをしたのは電車の中・・・ですね、原作では山手線だったので当初は都内での撮影を計画していたが製作者側が「昼間での撮影」を希望した為に関東の鉄道会社は全部渋り、他の地域でも駄目と言われ、最終的には福岡市交通局がOKをだして撮影が開始となりました。

鉄道における映画の撮影って意外に難しいのです、ちなみに「地下鉄に乗って」は撮影に当たり終電後の撮影だけだったので東京地下鉄の協力を得られ撮影が出来たと言うわけです、基本的に東京地下鉄での撮影は禁止です。